歯を失ってしまった方へ。「10年後の自分のために」知っておくべき治療の選択肢(インプラント・ブリッジ・入れ歯)
歯を失ってしまった方へ。「10年後の自分のために」知っておくべき治療の選択肢(インプラント・ブリッジ・入れ歯)
はじめに
「歯が抜けたままでも、なんとなく噛めるから大丈夫」
そう思って放置してしまっていませんか?あるいは、治療法の選択で迷われていませんか?
歯科医師として最もお伝えしたいのは、失った歯を補う治療は、単に「噛めるようにする」だけでなく、**「残っている健康な歯を守り、お口全体の崩壊を防ぐ」**ためにあるということです。
今回は、厚生労働省や学会のデータを踏まえ、インプラント、ブリッジ、入れ歯のメリット・デメリットを医学的な視点で公平に比較解説します。
1. 結論:残った歯を守るなら「インプラント」が第一選択です
結論から申し上げますと、**「他の健康な歯を削りたくない」「残っている歯に負担をかけたくない」**という点において、インプラントは最も優れた治療法です。
ブリッジや入れ歯は、構造上どうしても「他の歯」に支えてもらう必要がありますが、インプラントは唯一、独立して自立するため、他の歯へのダメージがありません。
2. 徹底比較:3つの治療法の違い
それぞれの治療法には医学的な一長一短があります。ご自身のライフスタイルや価値観と照らし合わせてご覧ください。
| 比較項目 | インプラント | ブリッジ | 入れ歯(部分義歯) |
| 噛む力 | 天然の歯と同等 | 天然の歯の約60% | 天然の歯の約20〜30% |
| 他の歯への影響 | なし(自立する) | 大(両隣の健康な歯を削る) | 中(バネをかける歯を揺らす) |
| 違和感 | ほとんどなし | 少ない | あり(異物感がある) |
| 手術 | 必要(小外科手術) | 不要 | 不要 |
| 治療期間 | 3ヶ月〜半年程度 | 1〜2週間程度 | 1ヶ月程度 |
| 保険適用 | 原則自由診療(自費) | 適用 | 適用 |
インプラントのメリット
健康な歯を削らない: ブリッジのように隣の歯を大きく削る必要がありません。歯は削ると寿命が縮まるため、これは最大のメリットです。
骨が痩せるのを防ぐ: 顎の骨に噛む力が直接伝わるため、骨の吸収(痩せること)を抑制できます。
見た目と機能性: 天然歯とほぼ変わらない見た目と噛み心地が得られます。
インプラントのデメリット・リスク
正直にお伝えすべきリスクもあります。
外科手術が必要: 抜歯と同程度の手術ですが、持病(重度の糖尿病や心疾患など)によっては適用できない場合があります。
インプラント周囲炎のリスク: 天然の歯と同様に、ケアを怠ると歯周病のような状態(インプラント周囲炎)になり、抜け落ちる原因になります。
費用と期間: 保険適用外のため費用がかかり、骨と結合するのを待つ期間が必要です。
参考データ:
日本口腔インプラント学会などの調査によると、適切なメンテナンスを行っている場合、インプラントの10年生存率は90〜95%以上と報告されています。これは非常に高い予後成績ですが、「入れっぱなし」では維持できません。
3. なぜ「ブリッジ」や「入れ歯」ではダメなのか?
決してダメではありません。ブリッジや入れ歯も立派な治療法であり、特に外科手術が難しい方には第一選択となります。
しかし、**「長期的な連鎖」**のリスクを知っておく必要があります。
ブリッジの場合: 支えとなる土台の歯には、過剰な力がかかり続けます。結果として、支えていた歯が割れたり、新たな虫歯になったりして、将来的に「さらに歯を失う」リスクが高まります。
入れ歯の場合: バネをかけた歯を揺さぶり続け、抜歯の時期を早めてしまうことがあります。また、噛む力が弱いため、消化器官への負担や、食事の楽しみが減るといった側面もあります。
4. 歯科医師からのアドバイス:治療後の「管理」が命です
どの治療法を選んだとしても、最も重要なのは**「治療後のメンテナンス」**です。
特にインプラントは「人工臓器」のようなものです。虫歯にはなりませんが、細菌感染には弱いため、ご自宅での丁寧な歯磨きと、歯科医院での定期的なクリーニングが必須条件となります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、インプラントを長く使うためには「適切なプラークコントロールと定期検診が不可欠」と明記されています。
当院の方針
当院では、インプラントありきではなく、患者さんの全身状態、ご予算、そして「10年後、20年後どうありたいか」を伺った上で、最適な治療法をご提案します。
CTによる精密検査を行い、リスクも含めて包み隠さずご説明いたします。まずは一度、ご相談ください。
※ 初診の方もWeb予約が可能です
※ 急患の場合はお電話でご相談ください